何度だって咲かせよう(仮)
初桜
*
「…えっ?!七時半?!?!」
あのまま寝てしまった芽依子は、案の定寝坊した。あと三十分ほどで家を出る時間。
(まずい!今日は遅れられないのに!)
急いで階段を下りる。制服のシワも伸ばしたいし、シャワーも済ませたい。
「パパ、ママ、おはよ!」
慌ててリビングに行くとすでに朝食を済ませ新聞を読んでる父と私と父のお弁当を作っている母。いつもの光景だ。
「めい、おはよう」
父は新聞から顔を上げ、挨拶をしてくれる。
「めいちゃん、今日は朝ごはん食べる時間なさそう?」
母に問われるが、そんな時間は確実にない。
「ごめん!お弁当は持って行くから!」
それからバタバタと仕度をし、どうにか時間に間に合った。遅刻は免れそうだ。
ゼーハーと息を切らしながら、「いってきます」と言い玄関を開けた。悠馬は門から少し離れた家の塀に寄りかかっていた。朝日を浴びた悠馬が輝いて見えた芽依子は胸が高鳴った。
「さ、桜田くん、おはよう。待たせてごめんね」
「はよ。待ってないぞ、むしろ時間より早いんだから」
ん、と言って差し出された左手を右手で握り返し歩き出す。
芽依子は密かに、昨日のことは夢じゃないんだなと感じていた。