何度だって咲かせよう(仮)
学校に行く途中、お互いのことを少しずつ聞きあった。誕生日に血液型、好きなもの。どうやら悠馬は甘党らしい。
「バレンタイン、待ってるから」
ふと放たれた桜田の言葉。芽衣子は頬を緩め、「わかった」と答えた。
学校に近づくにつれ、同じ学校の生徒も増えてくる。手は繋がれたままだ。さすがは冬桜の王子、視線は矢のように降り注ぐ。
「あの、桜田くん…手、離してくれない?」
視線に耐えきれなくなった芽依子は悠馬に申し出る。しかし悠馬は「無理」とただそれだけ言い、決して離してはくれない。むしろ繋がれた手は強く握られた。
結局、そのまま教室まで向かった。途中悲鳴のような声もヒソヒソと噂をするような声も聞こえた。…理由は芽依子が一番分かっている。
そんなこともあって芽衣子は少し構えて教室に入った。案の定、クラスメートは驚きと好奇心の目で二人を見る。そしてクラスメートが質問しようとしたとき、芽依子の右側から声が発せられた。
「俺たち、付き合ってるから。芽依子に手出すやつがいたら、女でも容赦しない」
ピシャリと言った悠馬に誰しもが驚いた。シーンとした教室内で、悠馬はまず自分の席に荷物を置き、そのまま芽依子の席にむかった。そして芽衣子を席に座らせ、悠馬は芽依子の前の席に座る。それがいつもの行動でもあるかのように、とてもスマートに。