何度だって咲かせよう(仮)
悠馬は芽依子にむかって手を差し出す。照れながらその手を掴む芽依子に悠馬は問いかけた。
「今日、言わないほうがよかったか?」
突然の話題に少し驚きながらも芽依子は思っていたことを話す。
「ううん、言ってくれてありがとうって思った。そりゃ、注目されるのは好きじゃないし大変だなって思ったけど、桜田くんは、私の、私だけの彼氏だもん…」
「そっか、俺も芽衣子が司以外の男と話してるの見るとイラっとする」
ふと芽依子が見ると、悠馬の口角が上がっていた。芽依子は悠馬が自分と同じ気持ちでいることに安心とうれしさの混じった気持ちになった。
それから、お目当てのカフェにむかい、時間を過ごした。多くの時間を共有しているからか過ごし方に大きな変化はないが、席に着いたときも道を歩くときも隣に悠馬がいることがとてもうれしくてドキドキした。
「じゃあ、また明日も迎えにくるから」
家まで送ってくれた悠馬からの言葉。それでも芽依子は悠馬と離れることが寂しかった。自然と悠馬の手を強く握る。
「芽依子」
突然の悠馬の問いかけに、下げていた視線を上げると、一瞬視界が暗くなった。それと同時に口唇には暖かい感触。
「おやすみ」
そう言い残し、悠馬は帰っていく。遠ざかる悠馬の背中を見ながら芽依子はしばらく、呆然と佇んでいたのだった。