何度だって咲かせよう(仮)

「ねえ、悠馬くん」

ぽつりと芽依子がつぶやく。悠馬は手を止め、顔を芽依子に向けた。

「額の傷、どうしたの…?」

悠馬は黙ったまま動かない。しばらくそのままだったが、芽依子はその空気に耐えられなかった。

「…ううん、なんでもない。もう少し寝かせて」

悠馬の答えを聞かずに目を瞑る。芽依子は何も知らない悠馬に疑問を持ち始めていた。しかし彼にその疑問をぶつけて、関係が崩れるのは嫌だった。彼と出会い、恋をした高校一年の時間を大切にしたかった。
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