何度だって咲かせよう(仮)
花霞
次の日から芽依子は熱を出し、そのまま春休みに入った。
悠馬はたびたび見舞いに来てくれていたが、気持ちの整理がつかず帰ってもらったり、寝たふりをして会わないようにしていた。
(悠馬くんは私のことなんて心配してないんだから、はやくあの子のところに行けばいいのに!)
布団を頭まで被り涙を流す。悲しいからなのか悔しいからなのか、わからなくなっていた。
風邪は治っていたが、毎日泣き続けていたため体調のよくない日が続いていた。
部屋に引きこもりがちになった娘を心配し、芽依子の母は「公園にでも出かけておいで」と言った。
言われるがまま近所の公園へ向かうと、ちょうど桜が満開だった。
幹の太い一本の桜が咲き乱れ、公園の象徴としてそこに立っている。そよ風が吹いていて、散りゆく桜の花びらたちが、より桜の儚さを引き立てる。
芽依子は近くのベンチに座り、しばらく桜を眺めていた。
ぼーっとしていても悠馬のことが頭にちらつく。
(こんな綺麗な桜、悠馬くんと見たらもっときれいに見えるんだろうな。一緒にお花見、したかった…)