何度だって咲かせよう(仮)

「あ、めいちゃん?」

突然話しかけられた芽依子は声のする方を向いた。そこにいたのは悠馬とデートした日に話しかけてきた男の子だった。

「水族館の…」

「覚えててくれたんだ!うれしいな〜!」

そう言って彼は隣に座ってきた。

「え、なんで座る…?」

「なんでって、めいちゃんと話したいから」

にこにこしながら彼は言った。
呆れながら芽依子はずっと疑問だったことを問いかける。

「…なんで私の名前知ってるの?」

「ん〜俺、魔法使いだから!」

「…」

「いやウソウソ!冗談!」

芽依子は白い目で見続ける。

「わかったわかった!じゃあ次また会ったときにその理由を言うってことでどう?」

会うかわからないのに、なぜか芽依子はまた会うことがあるのだろうと思ったが、問いつめても教えてくれなさそうだ。

「…わかった。その代わり、今日はあなたの名前を教えて」

「お安い御用ですよ、お嬢さん。御子柴 広、これが僕の名前」

ニコリと笑いながらそう告げた。

「御子柴くん…じゃあ、シバくんね」

芽依子がそう言うと、御子柴は驚いた顔をした。

「シバくん…いいニックネームだ」

切なげ笑いながら御子柴はつぶやいた。
不思議に思った芽依子が声をかけようとすると突然立ち上がり、「さーて!めいちゃんともおしゃべりできたし、今日は帰るね!またね!」と手を振りながら去っていった。


嵐のような人だった。でもここに一人でいても余計なことばかり考えて、結局堂々めぐりだったはずだ。だから彼、シバくんと少し話せたことで気分転換になったように思う。

(不思議な人)
クスッと笑いながら芽依子は思った。

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