幽霊の影
娘は自分の少し先に立っていた、今時珍しい赤いランドセルを背負った女の子と、肩を並べて一緒に歩き出した。



――あの子、誰?



瑛梨奈の同級生のようだが、クラスメートにあんな子はいなかったように思う。


テニスクラブにも、塾にも。


しかしその背格好に、私は見覚えがあった。



腰まで届きそうなほどに伸ばした、真っ黒な髪。



――幽霊……。


もちろん、そんな事があるはずは無い。


幽霊は20年も前に私の同級生だった上に、ついこの間、死んだのだから。



でも……

じゃあ、今まさに眼下で展開されているこの光景は、一体何だと言うのだろう。
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