幽霊の影
それから娘は、幽霊の本に視線を落とし、信じられないような事を呟いた。


「私も大きくなったら小説家になりたいなぁ。

この人みたいな」


「……えっ?!」



私は耳を疑った。


小説家?それも幽霊みたいな?



驚きを隠せない私の反応を見て、瑛梨奈はぷっと吹き出した。


「そんなにびっくりしなくてもいいじゃん。


確かに小説家って職業としては不安定だし、誰でもなれるものじゃないけどさ。

でも私もこの人みたく、義務教育が終わったら余計な寄り道なんかしないで、そのまま好きな事を仕事に出来たらなって思って」


「高校も大学も行かないって事?

駄目駄目、そんなの」


「わかってるよ。

そういうのは多分、才能があって運も相当いい恵まれた人にしか出来ない事でしょ?

私なんか全然。大体、まだ小学生だし」
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