幽霊の影
遺書には、私だけでなく周囲の様々な人間から受けた仕打ちと、それによって娘が溜め込んできた絶望が、淡々と吐き出されていた。



――告げ口がバレたときの仕返しが怖くて先生には黙ってたけど、一度だけ、我慢出来なくなって相談した事があります。


理由はわからないけどみんなに無視される、何もしてないのに笑われたり悪口を言われている事を訴えました。


せっかく勇気を出して言ったのに、私の話を聞き終えた先生は

「それ本当にあなたの悪口?」

「証拠は?」

と言って、取り合ってくれませんでした。


きちんとペンケースにしまったはずの消しゴムが無くなった事も

「気付かないうちに落としたんじゃない?

誰にでも『うっかり』って事はあるんだから、何でもかんでも人のせいにしないの」

と叱られました。


悪口を録音したり、物を盗まれる現場を撮影したわけではないので、そう言われてしまえば、どうする事も出来ません。



パパはいつも忙しくて、たまに家にいるときはすごく疲れてるみたいだったから、相談事なんかとても持ち掛けられそうにありませんでした。



折れそうな私の心を支えてくれたのは、好きな本だけ。


私を助けてくれたのは、亡くなった「私の勝ち」の作者さんだけで、生きている人で私の味方をしてくれる人はどこにもいませんでした。


そんな状況にも頑張って慣れようとしたけど、これ以上いろんな事を我慢するのは、もう無理です。――
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