幽霊の影
「先生」


幽霊はおずおずと挙手をして、申し訳なさそうに言った。


「私は、消極的で学級をまとめる統率力も無いから、出来ません」


そんな事はわかっている。



わかっていながら、私が幽霊を学級委員長に推薦した狙いは、もう1つあった。


クラスの女子の中で一番、人望が厚く発言力が大きいのは、実は私だ。


当然、このまま権力を維持したい。



学級委員長になれば、クラス内のあらゆる事について決定権を持つようになるが、同時に責任も発生する。


権力は欲しいが責任は負いたくない。



そこで、気が弱くて影の薄い幽霊を学級委員長にする。


こんな存在意義の無いリーダーには当然誰もついていかないだろうから、それを差し置いて、私がこのクラスをまとめ上げる。


何なら、こちらは友人と手を組んで、使い物にならないリーダーを数で圧しても良い。


そうやって権力だけを手に入れ、何か不都合があったとき矢面に立つのは、実際に学級委員長という役職に就いている幽霊。


私はその陰で自由に振る舞う事が出来る……


なんて事をついさっき、瞬時に思い付いたのであった。



――私ったら天才!



そのためには、あともう一押しである。
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