幽霊の影
幽霊の発言に耳を傾けていた担任教師は

「なるほど……」

とうなずいた。


「適任者という点では、そうねぇ」



――幽霊のくせに……!


「はい、先生!」

と、手を挙げようとしたが、返すべき反論が思い付かず

それ以上何も出来なくなった私は、後ろの席まで行って幽霊を引っぱたいてやりたい衝動に、黙って耐えるしかなかった。



そして結局、学級委員長が誰に決まったかと言うと――


「統率力があると思う人」という無記名アンケートがとられ、票を一番集めたのが


――思い出したくもない、私だったのだ。


「面倒だから嫌」

なんて本音はもちろん言えるわけもなく、上手い言い逃れも出来ず、私は仕方無く学級委員長を引き受けたのであった。



普段、自己主張どころか声もろくに出さない幽霊が一人前に自分の意見を述べ、そのせいで私が学級委員長になってしまった。


その事が、無性に腹立たしかった。


幽霊のあのおどおどした態度、弱々しい物言い

どういうわけか、それらがかえって私を苛立たせた。
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