微笑んだ先に咲く花
夕食を食べ終わって今、空の部屋にいる
ベッドに座った私の隣には空が
絨毯の上にどこから持ってきたのか小さな机が置かれて、その周りを
田中くん、廣瀬くん、剛さんが囲んで座った
そして何故か新庄さんも座っている
なんとも言えない空間に誰も口を開かない
「皆さん、空さんにお話があるんですよね?話したらどうですか?」
いつものニコニコした顔で新庄さんが剛さんを見る
顔を引つらせて剛さんはビールの缶を袋から六本取り出す
そしてみんなの前に置いていくけど、その様子を見ていた新庄さんと空の表情が曇る
「剛、何してるんだ」
「何って…ビールを配ってる」
「剛さん、何故慎ちゃんにも配るんですか」
2人が不機嫌な訳がわかったのか剛さんが焦っている
「あ、すまん!間違えただけだ!」
私に配ったビールを袋に戻して急いでジュースをくれる
「ありがとうございます」
「いや、俺こそごめんね」
「分かったならいい、ほら乾杯すんだろ?」
空が隣でプルタブを開けて缶を持ち上げた
剛さん達は安心したように同じような行動をした
もちろん私も。
「じゃ、乾杯!」
剛さんの合図で皆が缶を合わせる
「…いやー!!旨いな!」
「やっぱ昨日飲まなかったからかな」
「お前昨日我慢してたもんな、偉いぞ!」
「俺酎ハイのがいいな」
「2人は未成年なんですから飲みすぎないでくださいね」
「わかってるよ誠ー!」
「誠さんは強いんですか?」
「何がです?喧嘩ですか?」
「あ、いや、酒です」
「どうでしょうね。今のところ酔っ払うという経験はありません」
「なんだよー誠酔わないのかよー!どんな風になるか気になってたのによ」
「安心してください。酔ったとしても貴方に負けることなどありません」
「…すみません」
その光景を黙って見ている空
「空?無理してない?」
顔をのぞき込むと笑って
「大丈夫だよ。ただ、幸せだなって」
「幸せ?」
「どんだけ努力しても、頼んでも、慎が隣にいるなんて無いと思ってた」
…それは私もだった
「私も、ずっと1人で生きて、死んでいくんだと思ってた」
だから私も幸せだよ
「だからぁ!いちゃつくな!!空!」
ビシッと音がしそうなほど強く指をさされる
「おい空!第一、なんで春川慎ちゃんがお前と付き合ってんだよ!」
田中くんの顔はほんのり紅い
田中くん…田中くん?田中くん
「凛さんの息子なら田中じゃなくて橘、じゃないの?」
そうだよね。なんか引っかかってたんだ
凛さんと橘さんは夫婦で、その子供が田中くんなら田中はおかしい
質問を返すみたいだったけど気になって田中くんを見た
…今さっきよりも紅くなってる?