微笑んだ先に咲く花
凛さんの声は何となく母親に似ていた
でも、お母さんじゃない…
「いえ。何にもないんです、大丈夫です。やっぱり…明日家に帰ります」
申し訳ないけど、他人に話すほど軽いものではない
「…どうして?不安があるの?」
「自分でも分かんない…分かんないけど…凛さんには話せません。ごめんなさい」
それだけ言って扉を開けた
「しーちゃん…」
頭上から聞こえた優しい呼び声
この呼び方をするのはお兄ちゃんとお母さんだけで…
上を向くとお兄ちゃんがいた
「お兄ちゃん…」
「私には話せなくても、空は聞く権利があると思うけど?」
後ろからは凛さんの声が聞こえた
「どうして…どうして私をそんなに責めるの…?」
本心だった
私にもどうしたらいいかなんて分からない
分かっていたら私だってこんな自分変えてるよ…
「しーちゃん…」
「うるさい!!!!
…お兄ちゃんが私を見捨てたなんて思ってない。
私がお兄ちゃんの立場でも同じことしてるよ。
だから…悲しかったけど怒ってなんかない。
そんなことよりも同情で優しくされる方がずっとずっと嫌」
「同情なんかじゃない…」
「じゃあどうして?
妹でもなんでもないんだよ私たち。
可哀想なんでしょ?父親からは虐待うけて、唯一の味方だった母親も私をかばって死んだ。私が殺したようなもんだよ。
頼れる親戚もいなくて、施設に入るのが嫌でたった1人で生きるのに一生懸命で…もう許して」