夏休み
彼よりも真っ直ぐな瞳で言った言葉に、
あたしはブフッと吹きだした。
「アハハッ!
何よ味噌汁を作る女って!
いつの時代の告白?」
「……良いじゃねぇかよ」
「そういやあんた、味噌汁好きだもんね?」
「……おう」
「良いよ。
じゃああんたは、あたしの特製味噌汁を飲んでくれる男になってね?」
「……当たり前だろ。
お前は誰にもやらねぇよ…」
真っ赤な顔で、ぎこちなく告白…というかプロポーズをしてくるませた幼馴染。
本当に馬鹿だと思う。
だけどそんな馬鹿を初めて出会った瞬間に一目惚れして、
今までずっと好きだったあたしも相当の馬鹿だ。
「…そういや良いのかよ。
夢で出てきた…あのオレンジジュースをくれた彼氏は」
「え?
あぁ……良いの」
「泣くほど好きだったのにか?」
「良いんだよ。
だって来年、また会えるから」
「……?」
「その彼の名前はね…“夏休み”だよ?
夏休みをまた来年迎えれば、“夏休み”―――彼に会えるよ!」
来年また出会う“夏休み”は喜んでくれるだろうか。
きっと知っていた。
夏休みをこよなく愛するあたしを知っていたのなら。
あたしがアイツを好きだったことを。
また来年、待っているよ。
暑いけどきっと爽やかなこともある―――夏休みが。
【END】