夏休み
「本当だ。美味しいね」
「でしょ?」
間接キスだって彼は気がついていない。
あたしも気が付かないフリをした。
「そういえば明日で夏休み終わっちゃうな」
「……そうだね」
「学校だって思うと憂鬱だよ」
「…………」
「…どうしたの?」
さっきまで爽やかな笑顔を浮かべていた彼が、
突然黙り込んだ。
そしてあたしを真っ直ぐに見つめた。
「ごめん。
僕…もうキミに会えない」
色々な種類のセミの鳴き声だけが聞こえた。
まるで世界にあたしと彼しかいないみたい。
「……どうして?」
オレンジジュースで潤ったはずなのに
声が何だか枯れた。