夏休み







「本当だ。美味しいね」


「でしょ?」




間接キスだって彼は気がついていない。

あたしも気が付かないフリをした。





「そういえば明日で夏休み終わっちゃうな」


「……そうだね」


「学校だって思うと憂鬱だよ」


「…………」


「…どうしたの?」





さっきまで爽やかな笑顔を浮かべていた彼が、
突然黙り込んだ。

そしてあたしを真っ直ぐに見つめた。





「ごめん。
僕…もうキミに会えない」





色々な種類のセミの鳴き声だけが聞こえた。

まるで世界にあたしと彼しかいないみたい。






「……どうして?」





オレンジジュースで潤ったはずなのに

声が何だか枯れた。








< 3 / 13 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop