お隣さんのキケンな誘惑
「ただいまぁ!」
「お、お疲れ様です。」
「やりなおし!」
「はっ?」
私は意味がわからなかった。
何がやりなおしなのか…。
「普通さ、帰ってきてただいまぁ!って言ったら"お帰りなさい"だろ?
だからやりなおしだって言ったんだよ!」
「いや…だって付き合ってもないし、久藤さんと私は他人でお隣さんってだけでしょ?」
「うわぁ傷つく…俺達の関係は他人じゃないだろ?一緒に寝た仲だし耳までパクパクされたんだし!俺達は友達以上、恋人未満の関係じゃん?はいやりなおし!」
久藤さんは私が言い返す前にそう言ってまた玄関の外に出てしまった。
耳の件を言われたら何も言えなかったが、友達以上って程でもないような気もするけど…
そんな事を考えてるとさっきと同じように久藤さんが玄関の扉を開けた。
「ただいまぁ!」
「お、お帰りなさい…」
「今日はメーが休みだと昨日に言ってたし、寂しいだろうと思って早く仕事を終わらせたんだ!俺って優しいだろ?」
「……」
「あー疲れた!」
そう言って家の中に入って行った。
私は何も言わずにキッチンに向かい、冷蔵庫に入れていたトンカツを油で揚げた。
「今日はカレーだな!おっ、トンカツって事はカツカレーじゃないか!大好物なんだよな。
けど…メーは先に食べたんだな?
食器を洗ってる途中だったみたいだし。」
「いつも遅いし、一緒に食べるなんて決めてないので。
普段は私も仕事で遅くなるから、夕食がおそくなったりしますが、休みだし早く食べたかったので食べました。」
「じゃあこれからは一緒に食べようぜ?
一人でなんて寂しいだろう?」
「別に寂しくないですけど…」
「本当は寂しい癖に!」
「あまり煩いと油の中に手を入れますよ?」
「キャー、メーったら怖いっ!」
なんて言ってるし…この人は何を考えてるのかまったくわかんない。
トンカツが揚がると、私はお皿にご飯を入れて、切ったトンカツをご飯に乗せるとカレーを上からかけた。
久藤さんが座ってるテーブルの前にカレーとサラダを置いた。
お茶を出そうと思ったが、勝手に冷蔵庫を開けてビールを飲んでいたので出さなかった。