お隣さんのキケンな誘惑



「芽衣?今日はもう帰っていいよ!後は私がしとくから!」


あぁ…でも久藤さんの事を思い出すだけで胸がドキドキしちゃう。
重症だな私は…


「ダメだこの子…話すら聞こえてない!

ちょっと芽衣?聞いてんの?」


「え?何?」


「何じゃなくてもう帰っていいから早く久藤さんに夕食作ってあげなさい!」


「あ、ありがと!お疲れ様!」


私は急いで家に帰って夕食の準備に取り掛かった。今日は夜に作っていた煮物があるから後は魚を焼いて味噌汁を作った。
だけど久藤さんにはそれだけじゃ足りないから冷凍していた豆腐ハンバーグをレンジで解凍し、フライパンでもう一度焼いて照り焼きソースの調味料を混ぜて絡めた。


ちょうど、料理が完成すたと同時に久藤さんが家にやってきた。


ピンポーン


あぁどうしよう!玄関を開ければ久藤さんが居るんだよね?


私、普通に出来るかな。


ドキドキしながら玄関の鍵を開けて扉を開けた。


「ただいまメー!俺に会えなくて寂しかったろ?」


「お、お帰り…」


私はそう言うと素早くキッチンへ向かった。


寂しかったろ?なんて言われるといつもなら冷たい言葉で寂しくありませんから!って言えるけど、今はそんな事を言えない。


久藤さんはいつもの冗談かもしれないけど、私には冗談で言い返す事が出来ない。


「何か今日のメーっていつもと違うな?
何かあったのか?まさか昨日の男に何か言われたのか?」


「べ、別に何もないし、何も言われてません!さ、さあご飯が冷めないうちに食べちゃいな!」


「あ、あぁ!てか食べちゃいなって…
まぁ何もないならいいけど…いただきます!」


「いただきます!」


私達はいつものように遅い夕食を食べた。
だけど向かい合ってるし、気がつけば久藤さんが食べてる顔をじっと見つめていた。


「そんな見つめられると食べづらいんだけど?それともこの豆腐ハンバーグが欲しいのか?」


「いや、大丈夫です。」


「遠慮すんなよ?メーは豆腐ハンバーグないし俺だけ食べるのも悪いから一口喰えよ!」


そう言って豆腐ハンバーグを箸で摘んで私の口元まで持ってきた。


「ほら、口あけて!食べさせてやるから!」


急に言われても…それに久藤さんが使ってる箸なのにその箸が私の口に…。


「大丈夫ですってば!久藤さんが食べ…っん!」


そう言いかけていたら口の中に豆腐ハンバーグを久藤さんが入れてきた。


「ははっ!遠慮するからもう口に入れた!」


あぁ…どうしよう!絶対に私は顔が赤くなってる筈だ。
落ち着け芽衣!そう自分に言い聞かせた。


私は急いで食べ終わると、冷蔵庫からビールを取り出して飲んだ。


お酒を飲むと、ドキドキも落ち着いた。




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