かまってくれてもいいですよ?
お誘い
新しい柔軟剤を買った翌日は、洗濯日和だった。

1限から講義は入っていたけれど、折角の天気だからと思い、私は時計を気にすることなく洗濯機がアラームを鳴らしてくれることを待っていた。

金曜日の朝はいつも、何だか気が抜けている。

もう直ぐ1週間が終わるという安心があるし、午後に講義を取っていないということもあり、あまり気負わなくてもいい曜日だった。
 
取っている講義もそこまで厳しいものではなく、同じ学部の人しか集まらない論文指導と、教科書になぞって進められる文学史。

どちらも座っていればやり過ごせる講義だ。

目立たない席に座って内職をしていても特別注意を受けることはなかった。

逆に気を張っていないといけないのは、1年の必修科目の大半だ。

日付に沿って、学籍番号順に当てられてしまう上、その前後左右に座っている生徒にまでとばっちりが来る。

教授が教室内を歩きながら話し続けるため、他事をしていたり眠っていたりすればすぐ、ばれてしまう。
 
ピピピ…という控えめな音で、私はメールが届いたことを知らされた。

携帯を開くと、天野先輩からメールが届いていた。
 
「論文指導休むなら代筆するよ」
 
お願いします、と私が返事を打つ前に、画面に覆いかぶさるようにしてメールが入って来た。
 
「文学史来ないの?」
 
見覚えのないアドレスに首を傾げると、また天野先輩からメールが届いた。
 
「今のメール、朝陽君からです。よかったら登録してあげて!」
 
先ほどのメールをもう1度読み返して、私は思わず笑いそうになった。

隣り同士に座って、同じ後輩に宛ててメールを送っている2人の姿は、容易く想像することができた。
 
天野先輩と櫻田先輩が以前付き合っていたということは、知っている。

もう今は友達に戻ったと天野先輩が言っていたけれど、それでも充分に友人以上の関係に、私からは見えていた。
 
洗濯機からピーとアラームが聞こえ、私は急いで洗面所へと向かった。
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