かまってくれてもいいですよ?
何か用事があっても声をかけてこないだろうと思いながらも、このことは早々に忘れてしまおうと思った。
 
仲が悪い人が取り仕切っている行事にのこのこ参加しようとは思っていなかった。

また適当な理由を付けて曖昧に流して、そうして休んでしまえば良い。

単位にならないような行事にまで律儀に顔を出そうとは思わなかった。
 
友達がいるのなら、もっと違う考え方もできたかもしれない。

けれど、生憎の一人ぼっちだ。

集団で楽しんでいる人たちを眺めながら1人で校内を歩く程、私のメンタルは強くない。
 
「そう言えば先輩、今年のミスコンは審査員で出るんでしたっけ……」
 
私が話を振ると、天野先輩はすぐに頷いた。
 
「そうそう、だから私、最近学友会の方にまた顔出しているんだよー。出場者って基本、自推じゃなくて他推だから、結構正当派な子たちがエントリーされてて、正直顔の見分けがつかないの」
 
肩をすくめて笑った先輩は、昨年のミスコンでグランプリに選ばれたそうだ。

元々サークルや学友会にマメに参加していて、人気も高かったそうで、ミスコンをきっかけに更にファンが増えてしまったのだと、先輩の友人から聞かされた。
 
「それでね、学友会の中では一姫ちゃんに出てもらいたいって話があるんだけれど」

急に不穏なことを言われてしまい、私は眉根に皺を寄せた。
 
学友会という団体とは今のところ関わりを持っていないつもりだったし、誰が所属しているのかもまったく分からない。

どうしてそんな所で私の名前が上がるのだろうかと不思議に思った。
 
「それは普通に断りたいです」
 
私がボソッと言うと、先輩は「ですよねー」と笑った。
 
「でも、来週の呑みには来てくれるよね?」
 
改めて念を押されてしまうと、流石に断れない。

1つの申し出を断ってしまった後に、また次の申し出を断ることは、失礼になってしまいそうで怖かった。

「練習場に通っている人たちも来るみたいだし、彼らなら顔見知りみたいなものでしょう?」
 
「それは心強いですけれど、多分向こうは私のこと知らないですよ」
 
「そこの関係が未だに分からない」
 
天野先輩は小さく溜息をついて、私の顔をじっとのぞき込んできた。
 
「なんで朝陽君に言わないの?隠してるの?」
 
きっと何も考えずに放たれた言葉なのだろう。

私は天野先輩の言葉の裏まで読もうとして、それをやめた。
 
「別に理由なんてありません」
 
そう笑うことが精一杯であった。
 
余裕がないのは、先輩達のせいではない。

ただ、私個人の責任だ。

一々傷付かないように、一々気にしないように、一々真に受けないように。
 
そう、無関心であり続けることは、私にとってとても疲れることだった。
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