かまってくれてもいいですよ?
「でも、夏休み入る前に行っちゃったから、ビックリしましたァ。試験とか無かったんですかね、櫻田先輩」

学生会の生徒達が講堂の中へと入って来て、少しずつ持ち場へ散っていく。

もう直ぐ総会が始まるのだと、察した。

予定時刻からもう5分は過ぎていたものの、着席した生徒達は皆、携帯を触ったり近くの生徒と談笑したりと、特に気にする様子もなかった。

「2年までに大半の単位取っちゃっていたから、今年はレポート提出ぐらいしかなかったみたい。彼、見た目に似合わず真面目なんだよね」

真面目、というのは言われなくても何となくは察していた。

私たちが通うこの大学は、三流大学のため、滑り止めとして受験する人が多い。

入れる所がなくて渋々入学した生徒達の授業態度はあまり良いとは言えない。

講義中でも携帯を触っていたり、潜めた声で会話をしている生徒が大半だ。

講義が終わってから黒板を写真で撮ったり、ボイスレコーダーで講義を録音したりとすることが主流になりつつあるため、時間内にノートを取る生徒はまずいない。

そんな中、櫻田先輩はいつも頬杖をつきながらも、足を通路に放り出しながらも、片耳にイヤホンを入れながらも、それでも一応はノートを取っていたし、広い教室で行われる講義の際には双眼鏡で黒板を覗き込んでいることも稀にあった。

「ていうか、それくらいのギャップが無いと、人気出ないよねぇ、彼の場合は」

先輩の言葉に、私はまた笑顔を作って頷いた。

「あそこのグループって、何かとお騒がせじゃない。まだ問題を起こしていないのって、彼ぐらいなんじゃないかな。他は学生のクセに何だかガテン系気どりだし」

ガテン系、という言葉に何処か納得してしまいながら、私は椅子に座り直した。

直後に、総会開始を知らせるブザーが、スピーカーを通して掠れ気味に鳴り響いた。

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