さかやどり
約束の時間が過ぎても男子は来なかった。

ザーザー降りの中、傘を持たない同級生が何人も私の前を横切って行った。

もう少し待とう、と何度も時計を見直したけれど、講義が終わって30分はとうに過ぎていた。

手に持っていた携帯が震えた。

画面に「荻野」の名前を確認して、私は小さく深呼吸をした。

昨日付けられた痕が熱くて、痛くて、恥ずかしくて。

堪らなく泣きそうになりながら、私は微かに抱いていた希望を空き缶と一緒にゴミ箱へと放った。
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