Loki【完】
「俺以外に微笑むんじゃねぇよ」
「ふふっ、ごめんね。迅」
申し訳ないという気持ちで彼の頬に口付けると、彼も私の頬にちゅ、っとリップ音を鳴らしながら口付けてくれる。
そして私の肩を抱いて屋上へ向かおうとする。
その時だった。
“アイツ”が此方に向かって歩いてきたのは。
無意識に体が震えていたのか迅の服をちょこん、と掴むと私の肩をぐっ、と抱き寄せてくれる。
まるでずっと隣にいるから安心してくれと言ってくれてるかのように。
そのまま“アイツ”が近づいてきた。
私は目を鋭くして睨みつけ、“アイツ”は此方をちらっと見ただけで視線をずらす。
そしてそのまま私達とすれ違う。
その寸前に見たアイツは何故か口元が笑っていて。
私達に聞きにくい位の小声で何かを言っていた。