ナツイロ模様
第一章
煙草先生
「……あたま痛い」
6月下旬。そろそろ梅雨も開けて夏が始まるという微妙な季節で、あたしこと真柴夏季は風邪を引いた。
激しい頭痛と嘔吐しそうな感覚に酔いつつも、学校が大好きというアホなあたしは休めば?というお母さんの心配を振り切って学校へ向かうべく家を出た。
だけどその判断を激しく後悔する羽目になる。なぜなら現在、家から学校まで歩いてちょうど半分くらいの距離なのだが余りの頭痛に立っていられなくなりしゃがみ込んでしまったのだ。
「どーしよ。戻るに戻れないし……」
このまま倒れてしまいたい。そんな衝動に駆られた。どうしようもなく寂しくなった。このままだと高校生にもなって道端で泣き出してしまいそうだ。
いつも遅刻しているはずの同級生も今日に限っては通らない。あたしの町は結構な田舎であり、さらにこの道は人通りの少ないたんぼの側の狭い道路である。
「っ…い、たぁ……」
あたしの痛みが限界に達した時、不意に煙草の匂いがした。