わたしのこと、好き?


まさか自分に向けられている言葉だとは思わなくて、わたしはずっとうつむいていた。



「おい。聞いてんのか?」



「き、希歩(きほ)……っ!ボーッとしてる場合じゃないでしょ!ほら顔上げて」



「え?」



仁奈の焦ったような声が聞こえて、わたしは自然と顔を上げた。



「!?」



それと同時に目に映る麻生君の姿。



麻生君は椅子に座るわたしを無表情に見下ろしている。


そして、ポツリと呟いた。



「放課後、時間ある?」



「へっ!?ほ、放課後……?あ、あります……っ!いくらでも!」



「じゃあちょっと空けといて」



麻生君はそれだけ言うと、スタスタと男子たちの輪に戻って行った。



う、うそっ。


まさか麻生君から誘われるなんて。


夢じゃないよね……?



「やったじゃん。良かったね」



「う、うん……」



たったこれだけのことが、嬉しくて嬉しくてたまらなかった。


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