彼と私と元カレ
「……私……」
と、その時。
「あっ、そうだ小澤っ」
「えっ?」
「借りてたCD今日返すんだったよな?悪い、忘れてたっ」
「えっ…CD?」
紺野はそう言うと、理沙に向かって顎をクイッと駅の方に振る。
紺野からの助け舟なんだと気づいた理沙は、とまどいつつも…。
「……うん、そうだった、あれお気に入りなの」
「だよな?と、いうことで楠木先輩すいません、羽山にだけおごってやって下さい」
「あ…うん、わかった」
「えっ!?マジおごり?やったぁー」
「じゃぁ、3人で入るか?」
「行きましょー行きましょー」
3人がファミレスに入る手前で、紺野と理沙が先輩に頭を下げる。
「じゃぁ、失礼しますっ」
「失礼します…」
そして2人は駅に向かって歩き出した。
ファミレスのドアを開けた所で羽山が口を開く。
「っていうか、アイツらいつの間にCD貸借りする仲になったんだ?ま…いっか?じゃぁ先輩入りましょー」
「あぁ…」
入口のドアを開けたまま、楠木は駅の方へ歩いて行った2人の後ろ姿を見ていた。