彼と私と元カレ
「浴衣…なんだな?」
「え…うん?」
「……似合ってるんじゃない?」
「……えっ」
理沙が紺野の顔を覗き込むと、紺野は照れた顔で口元に手の甲を当てていた。
そんな紺野の姿を見て、理沙はドキッとする。
照れてる…だけだったのかな?
「見るなって…」
「あ…ごめんっ…」
どうしよう…嬉しい。
「とりあえず、何か食べる?」
「うんっ」
人が多いせいか、2人は自然と近い距離で歩き出す。
「ねぇ、紺野くん?」
「ん?」
「さっき、携帯見てたけど…もしかして私に連絡した?」
そう言って理沙が巾着袋の中から、携帯を取り出そうとして、その手を止める紺野。
「いいよっ」
「え…?」
「人混みで出すと危ないだろ?それに…小澤に電話とかはしてないよ」
「あ…そうなんだ?」
理沙は巾着を締める。