ゆりかご
「ごめん、遅くなっちゃったから送ろうか?」

DVDを片付けながらあたしに聞く翔矢。

「近いから大丈夫だよ。あたしの方こそ、遅くまでごめんね。」

「うちは全然大丈夫だから。気をつけて帰れよ?」

「うん…。」

翔矢……。


「…どした?」

あたしは、翔矢の目の前でうつむいて立っていた。

帰らなきゃいけない時間なのは解ってるけど、まだ帰りたくなくて…あたしは、翔矢のTシャツをキュッと握った。

「繭…?」

名前を呼ばれて顔を上げたあたしのおでこに、翔矢はチュッとキスをしてくれたんだ。

「…。」

「メールする。電話も。な?」

「…うん。あたしも。」

翔矢にたしなめられTシャツから手を離し、あたしは暗くなった道に足を踏み出した。

思ったより暗くなっていた外を見て、翔矢はまた送ろうかと言ってくれたけど、あたしはそれを断って家に向かった。

映画観てーーー終わっちゃったな。


< 111 / 272 >

この作品をシェア

pagetop