ゆりかご
教室には、まだ帰らずにおしゃべりを楽しんでる子たちが何人かいた。

「…はぁ。」

小さくため息をついて、しとしと降る雨をみながら、さっき担任がくれた飴を口に入れた。

雨はだいぶ小降りになっていたーーー早く片付けて帰ろう。

あたしは言われた通り、用紙を2枚1組にして互い違いに重ねていった。


そんなに時間のかかる作業ではなかったけど、終わる頃には教室にはあたし1人になっていた。

いつもなら、運動部の練習する声なんかが聞こえたりするのかな……今日は耳を澄ましても、雨音に混ざって吹奏楽部の音が聞こえてくるだけだった。

「…帰ろ。」

小さく独り言を言って立ち上がり、窓の外を見た。

雨はーーー止んではくれなかった。


シャラ…

反射的に音のする方へ顔を向けたそこには、

「清田さん、何してんの?」

コータローが、笑顔で立っていた。

「何って、雑用。もう終わって帰るとこだけど。」


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