ゆりかご
だめだ…ゆうちゃんの顔がチラついて、うまく話せない。

「コ、コータローこそ、何してんの…?」

「オレ?今日バイトだけどいつもより遅いから、ビミョーに部活出てた。けど忘れ物に気づいたから教室寄ったら清田さんがいて…。」

言いながら、教室の中へ入ってくるコータロー。

「ふ、ふーん。」

何だか、緊張して…。

「そんな事より聞いたよ。ゆ、ゆうちゃんのコト…。スゴイ事言っちゃうんだね。」

「あぁ…。だってホントの事だもん。」

「…。」

いや、そうかもしれないけどさ、自分に好意を持ってくれてる子に言える度胸が、スゴイって話だよ。


「てか雨がひどくなる前に帰ろ?オレこれからバイトだし。」

「あ、うん。」

コータローに促され、昇降口へと向かうあたし達。

雨の音と、コータローの音と……2人の、スリッパの音ーーー不思議と心地良く、穏やかな気持ちになるんだ。


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