ゆりかご
目が……潤みだす。

「繭子…?」

美羽が不思議そうにあたしの顔を覗き込んだところで、あたしは美羽に笑顔を向けた。

「ごめんね、何でもない。行こ!」


「昊太郎!もう一本いくぞ!」

「はい…!」

グラウンドから声が聞こえてきて、反射的に再びコータローを追うあたしの目。

「コータローがいるの?繭子わかる?」

美羽が、ひょこっとグラウンドの方を見て言った。

「あそこに…。」

「ふーん。遠くてわかんない。スゴイね繭子。」

「や、やだ、何となくだよ⁈コータローってほら、走り方に特徴あるし…。行こっか、美羽!」

何を焦っているんだ、あたしは…。


泣きそうになった訳なんて、今は考えたくなくてーーーあたしは美羽と別れるまで、できるだけたくさん会話をした。

コータローの走りは、身体が…熱くなる。

「……。」



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