ゆりかご
”あたしは、好きにならないから。”


ゆうちゃんを裏切ったあたしの、これがケジメだった。

「…。」

あたしが何も言わないでいると、ゆうちゃんも無言であたしの隣に来て、窓の外のグラウンドを見つめ始めた。


ゆうちゃん……コータローを、探してるの?

静かにゆうちゃんを見ると、目が右へ左へと動いていた…。


「コータローなら、ほら、あそこ。ちょうどスタートラインに立ってるの、わかる?」

あたしは指をさして、コータローの位置をゆうちゃんに教えた。

ゆうちゃんにとってあたしは裏切り者…それでも、少しでも何か話したくて。

ゆうちゃんは何も言わなかったけど、黙ってあたしの指差す方を見ていた。

「じゃぁあたし行くから。」

「…。」

ゆうちゃんは、やっぱり何も言わなかった…。

何か言いたそうに、一瞬あたしの顔を見たと思ったのは自意識過剰だったかな。


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