ゆりかご
「…あ。」

それは、キレイな青ーーー…。

涙を拭こうとカバンから取り出したのは、あの日、コータローから借りたままのタオルだった。

返す機会もなくて、でもいつか返そうと毎日持ち歩いていた。

「…。」

今日の良く晴れた空に溶け込んでしまいそうで、あたしはタオルを見つめた。

涙を受けとめるその青は、柔らかくて温かい色だった。

コータローの笑顔みたいで、あの日…手と手が触れ合った後、キスしたことを思い出す。


「また…洗わなきゃ。」

タオルをカバンにしまったあたしは、窓の外をぼんやりと眺めていた。


「清田さん…?」

ドクンとあたしを揺らすその声に振り向いて、視線が交わるーーー言葉が…出てこなかった。

泣いてしまいそうなあたしが、なんとかそれをこらえる。

「どうして…学校に居るの?部活でも始めたの?」

コータローが……あたしの目の前に。




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