狐火 ゆらり
「ここもそのうち、いろんなものが建つのだろうな」
青年が、眼前に広がるススキ野原を眺めながら言う。
今しも姿を消そうとしている僅かな夕日が照らす野っ原を、無数の赤蜻蛉が飛んで行く。
夕日が落ちれば、あっという間に闇が落ちるだろう。
風に揺れるススキに紛れて、ちらり、ちらりと尻尾が揺れる。
闇が落ちれば、ゆらり、ゆらりと狐火が躍るだろう。
「ここは、おいそれと手出し出来ねぇだろうよ」
酒を受けながら、俺は独り言のように言う。
青年は銚子を傾け酒を注ぎながら、ちらりと俺を見た。
白い髪がさらりと流れ、金色の目が俺を捉える。
「あといかほど、ここで月を愛でられような」
月が空に昇るにつれて、据えられた三方に、ぽ、ぽ、と白い団子が増えて行く。
俺は杯に口をつけた。
ここで月見をするようになって、どれぐらい経つのだろう。
俺たちにとって、刻などないも同然だ。
青年が、眼前に広がるススキ野原を眺めながら言う。
今しも姿を消そうとしている僅かな夕日が照らす野っ原を、無数の赤蜻蛉が飛んで行く。
夕日が落ちれば、あっという間に闇が落ちるだろう。
風に揺れるススキに紛れて、ちらり、ちらりと尻尾が揺れる。
闇が落ちれば、ゆらり、ゆらりと狐火が躍るだろう。
「ここは、おいそれと手出し出来ねぇだろうよ」
酒を受けながら、俺は独り言のように言う。
青年は銚子を傾け酒を注ぎながら、ちらりと俺を見た。
白い髪がさらりと流れ、金色の目が俺を捉える。
「あといかほど、ここで月を愛でられような」
月が空に昇るにつれて、据えられた三方に、ぽ、ぽ、と白い団子が増えて行く。
俺は杯に口をつけた。
ここで月見をするようになって、どれぐらい経つのだろう。
俺たちにとって、刻などないも同然だ。