【短編】Love agains
 3階でエレベータを降りると、あたしは相変わらず担がれたままいろんなことに気づいた。


「たかはしくん~、タクシー代はぁ?」

 意識はさっきよりはっきりしてきていて、時間が経っているせいなのか気分がどんどんよくなる。

「払ったよ」

 可笑しそうに答える高橋くん。

「…じゃあ、焼き鳥はぁ?」


 あたしはさっき食べたばかりのおいしかったつくねを思い出していた。


「出しといたよ」

 クスリと笑いをこぼしながら、楽しそうにまた答えていた。


 あまりにも優しいから、なぜか涙が出そうだった。


 部屋の前に着いて鍵をくるりと回した。


「…じゃあ、オレはここで」


 帰ろうとする高橋くんのスーツの裾を、あたしは無我夢中で握っていた。


「こ、小林さん…?」


 困っているのは分かっていたけれど、どうしても自分のワガママを抑えきれなかった。


「お茶、いれるよ」


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