【短編】Love agains
 別れた彼女のことを未だ吹っ切れていないから、このことがアイツのためにも少しはいいのかもしれない。

忙しさに追われる時間が、少しでも寂しさを紛らわすのならば…。



 そんな風に俺がチリンと鈴を揺らして鍵を握り締めた時だった。



 目の前には、いつの間にか現れた三毛猫。

チリン、という鈴の音に反応するかのように、にゃあと鳴いて俺をじっと見つめてた。


「どうしたんだよ、猫」


 猫に猫って呼ぶ俺はなんともセンスが無い。

かがんでじっと見つめると、何かに気づいたように三毛猫は歩き出した。



 おかしな話だけど、なんとなく俺を呼んでる気がしてた。

住宅街の小道をくねくねいく三毛猫に、俺は散歩するかのように追いかけた。


ただ、その猫も猫で、俺が立ち止まれば振り返って立ち止まるんだ。




< 37 / 62 >

この作品をシェア

pagetop