【短編】Love agains
 実家住まいの俺は、部屋を預かることになった裕一の部屋に向かった。


 ネコ付きで。



 さっき俺を案内した三毛猫はいつの間にか、どっかにいっていた。

無視して帰ろうとすると、泣き始めたこの大きなネコを俺は拾う羽目になった。



 もらっておいた鍵で鈴の音ともに扉を開けると、そこは今までみた裕一の部屋よりひどく寂しく見えた。


以前はもう少し、同棲相手の影響か、華やかに見えたものだ。



 俺がどうぞ、という前に彼女は上がりこんだ。



「君、名前は?」


 いい加減何も話してこようとしない彼女に、ちょっとだけ憤りを感じた。


強い口調になってしまったのも、仕方ないんだ。



「…あなたは?」


 振り返って、まん丸の目をこちらに向けてきた。

いまだ玄関にたたずむ俺は、なんだか情けなくて一気に肩の力が抜けてしまった。


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