【短編】Love agains
 予想通り、一緒に過ごしていた部屋の扉の前で、ネコは膝に顔を埋めるようにしゃがみこんでいた。

目の前に立ちはだかるようにして腕を引っ張りあげると、今度は抵抗せずに俯いたまま立ち上がった。



「ほら、入るぞ」


 鈴の音を響かせて扉を開け、先にテーブルに荷物を置いてネコを招き入れる。




「…なさい…」



 ぽつりと呟いたネコに、俺は何もいえなかった。

泣きながら、あの三毛猫とおなじ髪を揺らしているのに、抱きしめることもできなかった。


 オレンジ色の日差しが、薄暗い部屋を覆う。

ぼんやりとした影の中、彼女の頬にキラリと何かが光った。



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