【短編】Love agains
 テーブルには一枚の置手紙。




『あっちゃん、ありがとう』




 かわいらしい文字で、昨日の買い物のレシートの裏にかかれてた。

くしゃっとレシートを握って上着のポケットに突っ込んだ。



 たった一言だったけど、それだけで俺には十分。



 真っ黒こげな料理を食べたこと。

 陽だまりで楽しそうに唄う後姿。

 布団に入ると、ちょうどいいくらいの体温を分かち合うこと。


 まだまだ、俺には数え切れないほどの思い出がこの部屋にはあった。

それも覚悟したつもりで、彼女の背中を押したんだ。



 裕一に鍵を返して、家に帰ろう。




 ぐるりと一通り部屋を見渡して、ようやく靴に足を通した。

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