やさしい恋のはじめかた
5.自分と向き合うお年頃
「――そっか。そんなことがあったんだね」
すべてを話し終えると、雪乃はそう言いながら私の頭をひと撫でし、眉尻を下げて微笑した。
大海といったん距離を置くことに決めてから、一週間。
その期間が短いのか長いのか、それとも、ちょうどよかったのか。
私にはわからないけれど、雪乃に話を聞いてもらいたいと思えるようになるまでには、少なくともそれくらいの時間が私には必要だった。
今は、週末ということで雪乃を私の部屋に招き、宅飲みの最中。
お酒やお惣菜、おつまみをわざわざたくさん買ってきてくれた雪乃は、きっとこういう話になることはあらかじめわかっていたのだろう。
部屋のインターホンが来客を報せて出迎えたときから、終始笑顔を絶やさず、にこにことしていて、それだけで救われた気分だったし、彼女の心配の大きさも同時に感じた。
「で、里歩子はこれからどうするつもり? って言っても、まだ一週間じゃ、考えも気持ちもまとまってないと思うけど」
缶ビールに口をつけた雪乃が、テーブルにそれを置くと同時に遠慮がちに尋ねてきた。
カランと軽い音がしたので、冷蔵庫で冷やしてある追加のビールを取りにそちらに向かいながら、私は、これだけはやろうと決めたことを口にする。
「うん、なにもまとまってないけど、髪だけは伸ばそうと思って。でもそれは、桜汰くんに言われたからじゃないよ。私が自分で伸ばしたいと思ったの」