ずっと好きだったんだよ
「ゆ、悠也……。帰ろう?」


声のした方を見ると、真っ赤な顔をした栞が、いつの間にか私達のそばに立っていた。


「あぁ」


悠也は栞を見て返事をし、


「じゃぁな!」


と、私達に幸せそうな笑顔を見せ、鞄を持って栞のそばへ行く。


はぁ……


悠也の幸せそうな顔を見る度に、私の胸は痛くなる。

心がすごく苦しくなるんだ。


早く慣れなきゃ……

……って、えっ?な、何?


視線を感じて、その感じた方に視線を向けると、何故か栞は私をじっと見ていた。

その顔は、なんか辛そうというか、苦しい表情というか……


「栞?」


悠也に呼ばれて


「ご、ごめん。帰ろう!」


栞は悠也の隣に並び、二人で教室を出て行った。


何?

何で、栞がそんな顔をしているの?


私は二人が帰って行った方をじっと見つめていた。


「奈緒、大丈夫?」

「えっ?」


綺那を見ると、すごく心配そうな表情で私を見ていた。

そして、陽輝も……


「大丈夫だよ!」


私は出来るだけ笑って答えた。


「ごめんね、心配ばかりかけて」


いつまでもこんなんじゃ、二人に心配をかけ続けてしまう。

早く……

早く諦めないと。


< 105 / 294 >

この作品をシェア

pagetop