ずっと好きだったんだよ
ガチャ――


大地先輩がドアを開けると、男の人達に囲まれて迷惑そうにしている栞が私の視界に入る。


そういえば、栞って高校の時も、悠也以外の男の子とはあまり話していなかったな。


話しかけられると答えてはいたけど、栞から声をかけている所を見た事がないし、男の子とは距離を置いている感じがあった。


「栞ー!」


私は無意識に、栞に声をかけていた。

悠也の事を完璧に忘れたわけじゃない私は、正直、栞とも関わりたくなかった。

栞の幸せそうな顔を見る度に辛くなりそうだったから。

でも、悠也と栞が付き合うまでは、私は栞と結構話していたし、仲は良かった方だと思う。

だからなのか、迷惑そうにしている栞を見ると、“なんとかしなきゃ”って思った。


私、なにやってんだろう……


「奈緒……」


私に気付いた栞は、少し戸惑っていたけど


「久しぶりー」


男の人達の中から抜け出した、パタパタっと私のそばへ来る。

そして、


「ありがとう。助かったよ」


栞はにこっと笑って、小声でそう言った。

やっぱり栞も早くあの場から、逃げ出したかったんだろう。


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