ずっと好きだったんだよ
『俺に?』

「……うん」

『でも久しぶりに会ったんだからさ、お前らで楽しめよって言って』

「うん、わかった。ちょっと待ってね」


私はスマホを耳から離し、櫂の言葉を伝えた。

すると、


「えぇーっ!んじゃ、奈緒、ちょっと代わって!」


てっちゃんはやっぱり目を輝かせたまま私を見る。

そして、うずうずしているてっちゃんにスマホを渡すと、てっちゃんはスマホを受け取り、嬉しそうに櫂と話し出す。

てっちゃんはしばらく櫂と話すと


「はい、奈緒、スマホ。高橋先輩、来てくれるって!」


スマホを返された。


「うん、わかった」


そう笑顔で返事をしたけど、私は心の中で

櫂、来るんだ……

そう思ってしまっていた。



それから数十分が経ち――…


『もうすぐ着くから、店の前で待ってて』


と櫂から電話があった。


「高橋先輩、もうすぐ着くみたいだから、私、外で待ってるね」


私は櫂からの電話を切り、そう言った。


やっぱり私、みんなの前で……

ううん、悠也の前で“櫂”って言えなかった。


私が席を立つと


「俺も行く!」


てっちゃんも席を立つ。

そして、私はてっちゃんと店の外に出た。


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