ずっと好きだったんだよ
私が少し困った顔をしていると


「冗談だよ」


櫂はそう言って、笑っていたけど……

さっき、“待っている”と言ってくれた時の櫂の目は真剣だった。


「じゃぁな。気を付けて帰れよ!」


櫂は昔みたいに、ポンポンと私の頭を撫でて、


「あっ、悠也。遅いんだから、ちゃんと奈緒の事、送ってやれよ」


そう言って、帰って行った。


その場に残された私と悠也。

さっきよりも気まずい空気を感じていた。

ケジメを付けようとしていたけど……

私の決心が、また鈍りだす。

でも、それじゃダメなんだ。

それじゃ、いつもの繰り返しになってしまう。


「……悠也、帰ろうか?」


櫂が帰って行った方をまっすぐ見ていた悠也に声を掛ける。


「あぁ……」


そう言うと、悠也は私の家の方に向かって歩き出した。

悠也の家は、私の家とは反対方向。

私の家の方に向かって歩き出したって事は、一緒に帰ってくれるのかな?

だけど、私達は何かを話すわけでもなく……

黙って歩いていた。


< 195 / 294 >

この作品をシェア

pagetop