ずっと好きだったんだよ
「……じゃぁ、帰ろうか」


そう言うと、悠也はタクシーをつかまえ、私を先に乗せてから悠也も乗り込む。

隣に座る悠也の腕が触れそうで触れない距離。

全神経が私の左腕にいっていた。


私、気持ちの整理は出来ていたはずだよね?

今日、悠也に会ってもドキドキせず、普通に話せていたのに……

それなのに、何でこんなにドキドキするのだろう。


やっぱり、私。

まだ悠也の事を……?


悠也の住むマンションの前に着き、悠也はまた私の分の荷物を持ってタクシーから降りる。


「悠也。自分の分くらい持つよ?」


私もタクシーから降りる。


「いや。これ重いからいいよ」


悠也は優しく微笑み、マンションの中へ入って行った。

私も慌てて悠也について行く。

悠也の部屋は1Kで、あまり物はなく、ベッドとテーブル、後はテレビくらいだった。

昨日の夜も家で仕事をしていたのか、テーブルの上にはノートパソコンと書類が広げられていた。

そのそばには、眼鏡も置いてあった。


あれ?

悠也って、眼鏡掛けてたっけ?


「ごめん。散らかったままで」


そう言いながら、悠也は書類を片付ける。


「ねぇ。悠也って、眼鏡掛けてたっけ?」


私はテーブルの上の眼鏡に向けたまま聞く。

中学や高校の頃は、目は悪くなかったような気がする。


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