ずっと好きだったんだよ
入学式も終わり、教室へ向かう途中も、綺那と楽しく喋りながら廊下を歩く。


「あっ、そうだ!ホールに行く前、軽そうな男に会ったの!今朝、寝坊しちゃって時間がヤバかったから、走っていた私も悪いんだけどさー。その男にぶつかっちゃったの。で、謝って、ホールに行こうとしたらさ、腕を掴まれて、いきなり『君、可愛いね』とか言ってくるんだよ!私にそんな事言うなんて、意味わかんない!っていうか、入学早々ナンパする?」


そう、“可愛い”っていうのは、綺那みたいな子の事を言うんだよ。

なのに、私にそんな事を言うなんて、からかっている以外、ありえない!!


私は、さっきの男の事を思い出し、からかわれた事に、またムカついてきた。

ムカムカしている私の隣で


「奈緒が可愛いから、思った事をそのまま言ったんじゃないの?まぁ、入学早々、しかも学校でナンパする男なんて軽い以外ないけど」


“そんなに興奮して言う事?”なんて、綺那は呆れた表情で私を見る。


えっ?

私が可愛い?

私って、“可愛い”って言葉から程遠いと思うんだけど……


「私、今までそんな事言われた事ないし。ってか、会っていきなりそんな事言う?」


“可愛い”なんて言われた事ないし、もちろんナンパなんてされた事がない。

だから、やっぱりからかわれているとしか思えない。


「まぁ、そんなの軽く流しとけばいいんじゃない?」


ムッとしている私の話を、“はいはい”という感じで綺那は流していた。


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