ずっと好きだったんだよ
「あの……、聞いて下さい……」


実行委員の女の子が恥ずかしそうに、だけど、一生懸命声を出して、自由曲や伴奏者を決めようと言っているのに、クラスのみんなは騒いで聞いていない。

先生も「静かにしろよー」とは言うけど、ちゃんと怒らない。

前に立っている実行委員の女の子は“決めなきゃいけないのに、聞いてもらえない”という感じで、どうしたらいいのかわからず、おどおどしていた。

私は“ちゃんと聞こうよ!”って言いたかったけど、言う勇気がなかった。

どちらかと言えば、はっきり物事を言う私。

それに、こういう風な状況もよくないと思う。

だけど、それを言って、クラスの子達から“いい子ぶってる”なんて思われるのが怖かった。

だから、私は何も言えないで、その状況を見ているしか出来なかったんだ。

私が何も言えないでいる間に、実行委員の女の子は今にも泣き出しそうな表情になってきている。


どうしよう……


私は席替えをして離れてしまった萌実を見る。

萌実もこの状況をよく思っていないみたいで、誰かと喋るわけでもなく、複雑そうな表情をしていた。


その時――…


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