ずっと好きだったんだよ
その日の放課後――…


「悠也さっきの、えらいよね!」


さっきのLHRでは怒っていたけど、今は普通に陽輝と話している悠也に声を掛ける。


「あぁ、俺も悠也があんなに怒ったの、初めて見たよ」

「そうなの?」


小学校も一緒だった陽輝も、悠也の怒った姿は初めてなんだ。


そんな事を思っていると


「だって、あの子、困ってただろ?ああいう状況が嫌だっただけ」


悠也は何でもない事のようにサラッと答える。


私も嫌だったけど……


「だけど、それをちゃんと言えるってすごいよ!」


だって、私は怖くて何も言えなかったから。


「そうか?でも、奈緒もああいうの嫌いだろう?だって、お前もずっと険しい顔してたじゃん」


えっ?

気付いてたんだ……


行動には移せなかったけど、私が“ああいう事が嫌いだ”と、私の事を見て悠也が気付いてくれた事が嬉しかった。


そして、その日以来、悠也を見る度に私はドキドキしていたし、悠也の事が気になって、自然と視線で追ったりしていた。

今まで好きな人がいなかった私。

だけど、萌実や他の女の子の友達とかの恋の話は聞いていた。

だから、“もしかして、この気持ちって……?”と、私は自分の悠也への気持ちをなんとなくだけど、自覚した。

そう、これが私の初恋。

私は萌実から、“好きな人がいると、楽しい”と聞いていた。

悠也への気持ちに気付いてから、私も毎日がすごく楽しかった。


だけど、この恋が、すごく辛い恋になるなんて、この時は思っていなかった――…


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