ずっと好きだったんだよ
「ちょっと、ごめん」


そう言って、悠也が私の横を通り過ぎる。


えっ?


今まで悠也をずっと見ていた私。

悠也のいろんな表情を見てきた。

悠也の事なら表情を見ただけでわかる。

だけど、今、私の横と通り過ぎた時の悠也の横顔……

その表情は、初めて見る表情だった。

それは、焦っているというか……

怒っているというか……


私が悠也の走って行った方を見ようと、振り返ろうとした瞬間、


「奈緒っ!」


少し焦った感じの陽輝の声がした。

だけど、私は名前を呼んだ陽輝の方を見るんじゃなくて、そのまま悠也の走って行った方を見た。


……っ!!

あれって……


「松下さん……?」


悠也が向かっている先には、“学年一可愛い”と言われている松下 栞(まつりた しおり)さんとその友達であろう女の子達がいた。

そして、松下さんは男達に絡まれているように見えた。

走って行った悠也はその間に入り、多分、悠也は何かを言ったのだろう。

松下さんに絡んでいた男達はその場から離れて行った。

少し離れた所にいる私は、悠也が絡まれていた松下さんに気付き、助けに行った事はわかった。

そして……

松下さんの事を見る悠也の表情が、私達に向ける表情と違う事もわかった。


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