私を本気にさせないで
身体の芯まで温めるようにお風呂に浸かるものの、どうしても思い出してしまうのは彼の唇のぬくもり――……。

ゆっくりとお湯の中から手を出し、おもむろに触れてしまうのは自分の唇。

「キス……しちゃったんだよね」

ポツリと漏れた声は、浴室には驚くほど響いた。
それがますます現実味とを増していき、羞恥心に駆られてしまう。

バシャバシャと水をかきわけ、誰もいない浴室で大きく手を振って火照る顔を冷ましていく。

本当に信じられない。
動揺しまくっている自分もそうだけど、一番信じられないのは大森君だ。
一体どういうつもりであんなことをしたのだろうか。
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