私を本気にさせないで
そもそもキス、するってことは私にその気があったってこと……?

だけどとてもじゃないけれど、全くそんな素振りはなかった。
大森君にとって私は広報部の中にいる沢山の先輩の中のひとりだろうし、私にとっても大森君は広報部のちょっと有名でモテる後輩でしかなかった。

エレベーターに乗る前だって、いつも通りだった。
誰にでも見せるあどけなくて、人懐っこい笑顔を見せていたし。
口調だっていつも通りだった。なのに――……。

今でも思い出すと、胸が苦しいくらい締め付けられてしまう。

ただの後輩だったのに、初めて見た男の色気に、不覚にもドキドキさせられてしまい、無理矢理されてしまったキスを、いつの間にか受け入れていて、最後にはこのままでいたい、とさえ思ってしまった。
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